人に何かをお願いするとき。
間違いを伝えるとき。
相手に直してほしいことがあるとき。
同じことを伝えるにしても、言葉の選び方ひとつで、受け取る側の気持ちは変わるものです。
私は、言葉を選ぶときに大切にしていることがあります。
それは、必要なことはきちんと伝えながら、相手をできるだけ嫌な気持ちにさせないこと。
今日は、そんな言葉の選び方についてお話ししたいと思います。
同じお願いでも、言葉によって印象は変わる
今日、こんな出来事がありました。
ある人に、いつもとは違う服装をお願いする必要があったのです。
本来は事前に伝わっているはずのことでしたが、どうやらうまく伝わっていなかったようでした。
もちろん、その人が悪いわけではありません。
私は、その場でこう伝えました。
「今日はこれを脱いで、こっちにしてもらえるかな?」
ただ、それだけです。
「どうしてその服装なの?」
「ちゃんと聞いていなかったの?」
そんな言い方もできたかもしれません。
でも、相手は知らなかっただけかもしれない。
それなのに、責められたように感じる言葉をかける必要はないと思ったのです。
誰に責任があるかということと、目の前の人にどう伝えるかということは、別の問題です。
正しいことを伝えるために、相手を嫌な気持ちにさせる必要はない。
私はそう考えています。
相手を傷つけずに伝えるための3つの習慣
では、どうすれば必要なことを伝えながら、相手への思いやりも忘れずにいられるのでしょうか。
私が大切にしているのは、次の3つです。
1.最初から相手を責めない
何かが予定どおりに進まなかったとき、つい理由を問いただしたくなることがあります。
「どうしてできていないの?」
「なんで間違えたの?」
でも、事情を知らないまま責めるような言葉を使うと、相手は萎縮してしまうかもしれません。
まずは、何が起きているのかを確認する。
そして、必要なことを落ち着いて伝える。
例えば、
「なんでまだ終わっていないの?」
ではなく、
「今、どこまで進んでいるかな?」
と尋ねてみる。
それだけでも、会話の始まり方は変わります。
もちろん、原因を確認したり、改善を求めたりする必要がある場面もあります。
ただ、最初から相手を責める必要はないと思うのです。
2.相手の事情を決めつけない
人は、自分が知っていることを、相手も知っていると思ってしまうことがあります。
でも、実際には情報が届いていなかったり、認識が違っていたりすることもあります。
そんなとき、
「知っているはず」
「分かっているはず」
という思い込みだけで話すと、すれ違いが生まれやすくなります。
例えば、
「前にも言ったよね?」
ではなく、
「前にお伝えしたつもりだったけれど、確認させてね」
と伝える。
相手の状況を確認する余地を残すことも、言葉の思いやりだと思います。
3.してほしいことを具体的に伝える
優しい言葉を使おうとして、肝心なお願いが曖昧になってしまっては困ります。
だから私は、必要なことはできるだけ具体的に伝えたいと思っています。
「ちゃんとしてね」
では、何をどうすればいいのか分からないことがあります。
それよりも、
「今日は、こちらの服に着替えてもらえるかな?」
と伝えた方が、相手も行動しやすくなります。
優しく伝えることと、曖昧に伝えることは違う。
ここは、とても大切なことだと思っています。
こんなとき、どう言い換える? 日常で使える言葉の例
言葉の選び方は、仕事だけでなく、家庭や友人との会話でも役立ちます。
例えば、こんな言い換えができます。
つい言ってしまう言葉 言い換えの例
- なんでできないの? どこが難しかったかな?
- 早くして! 何時までにお願いできるかな?
- ちゃんと確認した? 一緒に確認してみようか
- それは違うよ 私はこう理解していたけれど、どうかな?
- 何回言えば分かるの? もう一度、確認しておこうか
もちろん、いつでも柔らかい言葉だけを使えばよいわけではありません。
安全に関わることや、急いで対応しなければならない場面では、短く明確な指示が必要です。
大切なのは、状況に合わせて、相手に伝わる言葉を選ぶこと。
そして、必要以上に相手を責めないことだと思います。
優しい言葉を選ぶことは、何も言わないことではない
私は、相手を嫌な気持ちにさせたくないからといって、必要なことまで言わずに済ませるのがよいとは思いません。
伝えるべきことは、伝えなければならない。
間違いがあれば、直してもらう必要もあります。
でも、そのときに相手の人格まで否定する必要はありません。
「その行動を変えてほしい」ということと、
「あなたが悪い」ということは、同じではないのです。
言葉を選ぶことは、相手に遠慮することではなく、相手を尊重すること。
私はそう考えています。
言葉を伝える前に、意識したい3つのこと
何かをお願いしたり、注意したりするとき。
言葉にする前に、ほんの少しだけ考えてみる。
1.これは事実? それとも自分の思い込み?
相手が事情を知らない可能性はないでしょうか。
2.相手を責める言葉になっていない?
必要な指摘と、感情的な非難が混ざっていないかを考えます。
3.何をしてほしいのか、きちんと伝わる?
優しさだけでなく、分かりやすさも大切です。
この3つを意識するだけでも、日常の会話は少し変わるかもしれません。
言葉には、その人の品格が表れる
私は、品格というものは、特別な場所での振る舞いだけに表れるものではないと思っています。
むしろ、何気ない日常の中にこそ、その人らしさが表れるのではないでしょうか。
- 思いどおりにいかなかったとき。
- 相手が間違えていたとき。
- 自分の方が正しいと思ったとき。
- そんな場面で、どんな言葉を選ぶのか。
そこに、その人の心の余裕が表れるように思うのです。
もちろん、私もいつでも完璧にできるわけではありません。
それでも、できるだけ相手の気持ちを想像しながら言葉を選びたい。
必要なことは伝える。でも、必要のない傷はつけない。
今日の小さな出来事から、改めてそんなことを考えました。
言葉は、相手に届いたあとも、その人の心に残ることがあります。
だからこそ、私はこれからも、言葉を大切にしていきたいと思います。
有村真理愛