仕事帰りにスーパーへ寄ると、季節の果物が並んでいます。
その日目に止まったのは、種なしの巨峰でした。
カゴに入れてから値札を見て、思わず手を止めました。1295円。
私の中では、まだ700〜800円くらいの果物という感覚が残っていたのです。
「いつから、こんなに高くなったんだろう」
物価の影響なのか、自分が値段を更新していなかっただけなのか。
どちらにしても、その夜はかごに戻しませんでした。
種がないと、食べ方が楽です。
夕飯のあとに少し冷たいまま口に入れると、甘さが先に来て、あとから果汁が残る。
高いと思いながらも、「一日の終わりに小さな贅沢をひとつ置けた」と感じました。
物価が上がっている今、何かを我慢する選択肢もあります。
でも私は、こうした「少し高いけれど、心が喜ぶもの」を完全にやめてしまうと、日常の楽しみが減ってしまう気がしています。
大きな贅沢はしなくても、こうした小さな選択を残しておくことが、私にとっては暮らしを守ることにつながるのです。
値段の記憶は、なかなか更新されません。
棚のほうは、静かに先へ進んでいます。
その差に気づいて苦笑して、それでも買う。
そういう夜も、私は好きです。
有村真理愛