私には、今でも時々思い出す女性がいます。

着物がよく似合って、民謡や日本舞踊を楽しみ、いつもどこか凛としていた人。

私を育ててくれた祖母です。

子どもの頃の私には、祖母が特別なことをしているようには見えていませんでした。
ただ、一緒に暮らしていた。
それだけだったのだと思います。
けれど、自分が歳を重ねるにつれて、ふと気づくことがあります。

私が「素敵だな」と思う女性の姿には、どこか祖母の面影があるのです。

美しい人、という記憶

祖母は、とても優しい人でした。
そして、品のある人でした。

着物を着て、
民謡を楽しみ、日本舞踊を楽しむ。

自分の好きなものを持っていて、日々の暮らしの中に楽しみを見つけることのできる人でした。

子どもの頃の私は、
そんな祖母の姿を当たり前のように見ていました。
だからでしょうか。
私も着物が好きです。
日本の文化や、美しいものに惹かれます。

今になって思えば、
誰かに教えられたというより、祖母のそばで暮らしながら、自然と受け取ってきたものなのかもしれません。

人から人へ受け継がれるものは、言葉で教わったことだけではないのでしょうね。
仕草だったり、ものの選び方だったり、暮らし方だったり。

そして、何を美しいと思うのか。

そういうものも、
知らないうちに心の中へ残っていくのだと思います。

祖母の着物を着る

この写真で私が着ている着物は、祖母が着ていたものです。
私には少し丈が短いのですが、それでも、時々袖を通したくなります。
新しい着物にはないものが、そこにはあるからです。

祖母が選び、祖母が袖を通し、祖母の時間を一緒に過ごしてきた着物。
それを今、私が着ている。
そう考えると、なんだか不思議な気持ちになります。

桜の下でこの着物を着た日も、ふと祖母のことを思いました。

満開の桜を見上げながら、

「おばあちゃんも、この着物でいろいろな景色を見たのかな」

そんなことを考えていました。
会うことはもうできなくても、こうして受け継いだものに触れると、少しだけ近くにいるような気がします。

歳を重ねること

若い頃は、
「歳を重ねる」ということを、今ほど深く考えていませんでした。
けれど、人生の時間を重ねるほど、どんな女性になりたいのかを考えるようになりました。
若く見えることも、もちろん嬉しい。
美容も好きですし、
これからも自分なりに楽しんでいきたいと思っています。
でも、美しく歳を重ねるということは、
若さを残すことだけではないのだと思うのです。

好きなものがあること。
自分の時間を楽しめること。
人への優しさを忘れないこと。

そして、
自分自身を大切にしながら暮らしていくこと。

外見だけではなく、生きてきた時間まで、その人の美しさになっていく。
私は、そんな歳の重ね方をしたいと思っています。
そして、その姿を初めて見せてくれた人が、私にとっては祖母だったのだと思います。

受け継いでいくもの

祖母から受け継いだものは、着物だけではありません。

美しいものを好きだと思う心も。
暮らしを楽しむことも。
人に優しくすることも。
きっと、私の中に残っています。

子どもの頃には気づかなかったことが、
歳を重ねてから分かる。

それもまた、人生のおもしろさなのかもしれません。
いつか私も、誰かから思い出してもらえるような女性になれたらいい。

「あんなふうに歳を重ねるのも、素敵だな」

そう思ってもらえるように…

祖母から受け取ったものを大切にしながら、今日もまた、自分の人生を歩いていきたいと思います。

美しく、生きる。

その意味を考えるとき、私の心にはいつも、


着物姿の祖母がいます。